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さらしなやきとりにするぞ

ろじのポケ擬せっていブログ

B軍過去小ネタ

練りつつ考えたものをのせる

いかにもなかんじが苦手な方はご注意

 グリンダが彼らのような一癖も二癖もあるものを仲間に引き入れたのは、彼女自身もまたそれとおなじようなものだからである。幼い頃から彼女には両親というものがいなかった。物心ついた時にはどこかへと消えていた。幸いにも彼女の周りには心優しいポケモンが多かったから、彼らによってグリンダは言語を覚えた。生活する術を学んだ。彼女が他と違ったのは、好奇心の強さである。なんにでも、誰でも。自分の興味を引くものならば、なんでも試したし話しかけた。それが幼い彼女の一人旅という無謀とも言える趣味のはじまりだった。
数多の町を練り歩き、知らず識らずのうちに彼女には知り合いが増えていた。時には子供から老人、時には人々に伝説とうたわれるほどのポケモンとも。旅を終え、故郷へ戻るたびに彼女はその知り合いたちを思い出す。しかし、もう会うことはほとんどないのだろう。そう考えると少しだけ胸の奥が痛んだ。ちらりと脳裏に見えた幼き日の黄金色の彼女がこちらを寂しげに見つめている。霞みがかった記憶は、彼女が紡ぐ言葉を再生してはくれない。
ふと、故郷の旅をしていないことに気づいた。自分が知っているのはあの捨てられた森だけであると。行こう、と彼女は微笑んだ。そうだ、今度は知り合いではなく仲間をつくろう。共に笑い、共に泣き、共に戦う仲間を。普通ではつまらない。どうせなら、刺激的なひとを。

 

 

ジルヴァはおよそひととはずれた感覚を持っている。グリンダというこれまたおかしな女についていくのを決めたのは単なる興味ではなく、直感で彼女はそうするだけの価値があると感じたからだ。洞窟の奥の、闇の中で暮らしていた彼に彼女は眩しい世界を見せた。目にうつるもの全てが面白かった。なればこそグリンダのなすことには逆らわずともよいのだ。これほどまでに自身を良い意味でも悪い意味でもワクワクさせる存在など、きっとグリンダほどいないのだろうから。これもまた、直感だが。彼は意外と、馬鹿なのである。

 

 

ドロシーは風に乗ってやってきた。魔法の類の話ではない。そういう種族なだけだ。だから不幸にも燃え盛る彼女のタテガミの上に着地したときは己の種族を呪った。彼女は彼の燃えかけのわたほうしをつまむと楽しそうに笑った。お前は仲間がいないんだろうと。見透かされた、とぎくりと体がこわばった。自慢ではないが、自身の種族と、人間の顔と体には自信があった。誰からも愛されるその自信が。だが得られたのは一時、それも人間が使う寝具の上でだけである。彼が本当に求めるものはそこにはなかった。彼女と青い男はドロシーに手を差し伸べる。どうせならその見た目、自分たちに生かしてみないか、など。勧誘にしては直接的な言葉。しかしそれこそ、その真意こそ、ドロシーが求めていたものだったのだ。ひとりではない。風に乗って何処へと旅立つことは、いつの間にかしなくなっていた。

 

 

ゲルダは瞳を恐れた。見つめてしまえばその持ち主の未来が頭に流れ込む。良いものだけなわけがない。時には自身にまで影響が及びそうなほど悲惨である。彼はそれを優先的に見てしまう。それで傷つきたくはなかった。いつの間にか人目を避けるようになった。人目につかぬよう、自身の性格を封じ込めた。傷つきたくなかった。どこまでも保守的な彼が彼女に出会ってしまったのは、寒い夜空の下である。満天の星を背に彼女が微笑んで自分を見つめていた。目を合わせてしまった。未来が見える。なぜか自分がそこにいた。笑っていた。ゲルダはほぼ初めてといってもいい幸せな未来に、涙をこぼした。そして彼女はその背を撫で、彼の救いとなる言葉を発したのだ。

 

 

ヴィクター。子持ちの40代、バツイチのビビりカッコつけキリキザン。しまらない自分のその肩書きをヴィクターは情けなく思っていた。妻もそんな私に失望してでていったのだ。行き場を失った愛を息子に惜しみなく注げば、加減を間違えたようで最近はやたらとつっけんどん。ひとによく見られたくて格好つければ必ず空振りする。何もかもうまくいかない人生、いやポケ生だ。そんなヴィクターを心配して無理やり旅に出させたのは他でもない息子である。不甲斐ない父親を矯正してくれるひとがいれば男でも女でも誰でもいい。そんな誰に似たのか不器用な息子の思いなど露知らず、息子にまで失望されたと失意のどん底に突き落とされ、捨てられたチョロネコの如くダンボールで縮こまるヴィクターを拾ったのは。大抵のことじゃ失望も怒りもしない、大らかで変な女であった。

 

 

ガラテアは逃げ惑う者を見るのは好きではなかった。自分の種族というのはどうにも人間に好かれていない。別に動くものにいつも反応するわけではないし、もうふたつのアタマを制御できないわけがない。人間の姿をとることができるようになったとき、彼女は少なからず歓喜した。もう誰も自分を恐れたりはしないと。だがそんな期待に反して人々は彼女を恐れた。理由は明確だ。彼女の手にはアタマがある。正確に言えば手の代わりにアタマがついているのだ。それは人々に異形の者という認識を植え付けた。ガラテアは失望した。なぜ危害も加えない、すこしひとと違うだけの自分がこんなにも恐れられなければならないのだろう? だから彼女は演じることにした。人々の恐れる自分を。どうせ誰にも本当の自分を見てもらえないなら、やりたい放題やってやろう。そんな頃だ。燃えるような緋色の髪をした女に出会ったのは。